「高円宮杯全日本中学校英語弁論大会」は、日本で最も権威ある英語弁論大会として、毎年約10万人の中学生が参加し、自らの考えや夢を英語で表現する場を提供しています。この大会の成り立ちは、戦争を経た一人の特攻隊員、鈴木啓正さんの強い信念に根ざしています。
鈴木さんは、若い頃から英語を学び、いつか弁論大会を開くことを夢見ていました。しかし、太平洋戦争のさなか、彼は特攻隊に志願する決断を迫られました。この決断の背景には、親友・富永靖さんとの約束がありました。二人は「将来、英語を広めるための大会を作ろう」と誓い合ったのです。
戦争の厳しい状況下、富永さんは戦死し、鈴木さんはその約束を果たすべく生き残ることを誓いました。鈴木さんは、終戦後の昭和24年に初めての英語弁論大会を実現させ、その後も運営に情熱を注ぎました。そして、2006年に82歳で亡くなるまで、彼はその活動を続けました。
鈴木さんの妻、順子さんは、彼が弁論大会を思いついた背景について「彼は世界に目を向ける重要性を感じていた」と語りました。鈴木さんが特攻隊に志願した理由について、順子さんは「当時の若者たちは生きるか死ぬかの選択肢がなく、国を守るために戦うことが求められていた」と語り、その中でも彼は自身の夢を忘れずに持ち続けていたことを強調しました。
富永さんとの友情は、鈴木さんの生きる力の源であり、彼が弁論大会を設立する原動力となりました。鈴木さんの思いは、今も多くの若者に夢を与え続けています。この大会を通じて、彼らの思いは時間を超えて受け継がれ、未来の世代に希望を与えることでしょう。
鈴木啓正さんによって設立された日本学生協会 (JNSA) 基金は、高円宮杯全日本中学校英語弁論大会を主催しており、主に中学生の英語能力向上を目的とした活動を支援しています。この基金は、英語教育を充実させるために必要な資金を提供し、参加者が英語で自分の意見を表現できる場を設けています。また、JNSA基金は大会の運営や実施において、教育リソースの提供やイベントの企画に関わり、参加者のプレゼンテーションスキルや国際理解を深めることを目指しています。こうした取り組みによって、JNSA基金は若い世代のコミュニケーション能力の育成に貢献し、日本全体の英語教育の質を向上させることに寄与しています。